サルトルの「人間は自由の刑に処されてる」って言葉。
人間には、決定回避の法則ってのがあって、選択肢が多くなりすぎると何も選ばないって選択をするってやつと掛け合わせてみる。
自由すぎるこの世の中では、何のアクションも起こさない人ってのは珍しくないんですよね。
セミリタイアーは、少なくとも、セミリタイアするための条件達成のために動いてそれを成し遂げたわけだけど
そこからがあまりに自由すぎて、結局何もしないか、もしくは元々やってたことと同じような事をする。
自由すぎると結局不自由というか、不幸な感覚に襲われ続けるんですよね。
何もしなくていいんだろうか。
みたいな。
怠惰の苦しさ
大半の動物は、食って寝て子孫を増やすしかやることがないので選択肢に迷う事がないんだけど
人間はそうじゃない。
機械化が進んで、人は群れなくても生きられるようになったし、個人レベルでは子孫を作る必要すらなくなってきてる。
僕らはそんな世界の中で、働く事すら放棄した。
しかし、それは結果として、ただただ怠惰な世界に身を委ねているだけだ。
怠惰を貪るというのは、欲の究極のような気がしていたけど、実際は違う。
精神的にも肉体的にも幸福であること。より善く生きること。
満足な豚であるより、不満足な人間である方が良い。そして、満足な愚者であるより、不満足なソクラテスである方が良い
これはジョン・スチュアート・ミルの言葉で、質的功利主義を表現した端的な文章だ。
つまるところ、我々人間は、怠惰やら享楽やらにおぼれている事を、自分自身の精神的幸福と結びつけるのが意外と困難なように出来ている。
これは、倫理や社会的道徳観の賜物かもしれないし
もしかすると、もっと根本的な人の社会性の根底から沸き起こる感情なのかもしれない。
理由はわからんが、ただただ怠惰であることを許せるのは、一種の才能だと僕は思っている。
残念ながら僕はそのタイプではない。
だから短時間といえど、ちまちま働くし、生活もそれなりに自制する。
これはエピクテトスも言っている事だけど、
その場の欲に支配されたとて、幸福になれるとは限らない。
精神的幸福を含めた、質的な功利主義を求めるなら、一定の理性は必要で、それは社会道徳的観点からというよりも
自分が自分に対して自尊心を持って接することが出来るか。というところがその境目になるんだと思う。
ゲーミフィケーション
仕事に関して、ゲーミフィケーションなんて言葉をちらほら聞くけど
結局、人間は課題をクリアすることでドーパミンが出るようになっている以上、
何もしない人生では「厳しい」のだ。
そして、一般幻想として存在する幸福条件の達成でも、幸福にはなれない。どんな条件下であっても「脳は順化する」からだ。
現に、我々は非常に豊かな生活を送っているが、他者との比較や、より多くを求めるといった精神をもって、現在を否定して生きている。エピクロスが聞いたら嘆くだろうが。SNSという発明でそれは加速した。
動物として満足に生きられるレベルを幸福とするなら、大概の日本人はその領域を軽く超越してる。しかし、幸福ではいられない。
このサイクルから抜け出すには、いくつか方法がある。
- SNSなどの比較メディアから、離れること
- 自分で課題を作って達成すること。
今回は後者。
小さくてもいいから、やったことリストをつけていくとやった感ってのは養えるもので、これが割と新しい挑戦への引き金を引いてくれる。
上述した通り、人間の脳は順化する。どんなに幸福であろう条件下で生きていても、なれてしまうとドーパミンは発生しない。
結局、これに関しては、新しいことをするしかないという事になる。
だから、どんなに小さい事でもいい。
新しい事に挑戦し続ける事。
意識高い話をしてるんじゃない。ただ楽しく生きるための手段の話をしている。
- いったことの無い公園に、チャリこいで行くとか。
- 食べたことの無い、料理を食べに行くとか。作ってみるとか。
- 普段観ないジャンルの映画を観るとか。
- 近所の人に挨拶してみるとか
- したことのない趣味や習い事に手を出すとか
ぶっちゃけなんでもいい。
ドーパミン的観点から言えば、幸福を感じられない理由は、条件が揃っていないからではなく。何も新しい事をしないからだ。
僕たちは自由の刑に処されている。そして現代はサルトルの時代より、さらに自由になった。それ故に、選択を回避する人間が増えた。そして常に欠乏感に苛まれている。
コレを抜け出す一つの方法として、Todoを作るなら。
やったことない事をやる。
これにつきる。 自由であるということは、自分の人生をデザインすることであり、選択を放棄するという事ではない。自制し、自ら制限する事ができることこそが、自由であるという事なのかもしれない。
鼻くそ自己啓発みたいな言葉選びしかできないけれど。そんな話でした。
参考

- 作者:ジャン=ポール・サルトル
- 発売日: 2020/08/04
- メディア: Kindle版

- 作者:シーナ・アイエンガー
- 発売日: 2010/11/12
- メディア: 単行本

- 作者:ジェイン マクゴニガル
- 発売日: 2015/11/15
- メディア: 単行本

- 作者:エピクロス
- メディア: 文庫